さまざまなウェブメディアや
『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆する他、
ご自身のBLOG『京都くらしの編集室』で京都ライフを発信している
京都在住フリーライター・江角悠子さん。
彼女ならではの視点で
京都のおつけもん屋さんを訪ね歩きます。
お店の個性やオススメの逸品、
ありきたりじゃない京のおつけもんが揃っています。
ツウな情報をお楽しみください!
京都ライター江角悠子の
京都おつけもん探訪記
Kyoto Otsukemon Exploration
Part.11
辻しば漬本舗
Tsuji Shibadsuke Honpo
大原三千院へと続く参道の少し手前にある「辻しば漬本舗」。ここは、新鮮な野菜が購入できることで人気の「里の駅大原」からも近い場所。「この場所では元々、祖父が桶屋を営んでいたんです」と話すのは、父親から店を継いで、2代目となった辻和豊さん。
「漬物屋を始めたのは父親です。家業の桶屋を続けることが難しくなり、どうしようかと考えたとき、赤紫蘇を自家栽培して自宅でしば漬けも作っていましたし、桶屋なので、漬物をたくさん漬け込める桶もあった。それならと昭和45年に漬物屋を創業して今に至ります」。
大原は、京都市内からはバスで約1時間ほど。ちょっと距離はあるけれど、わざわざ訪れる人も多い名所のひとつ。
しば漬けの発祥は京都大原であることは、以前「土井志ば漬本舗」さんの記事でも紹介しました。「辻しば漬本舗」でも、大原の畑で自家栽培した赤紫蘇を使ってしば漬けを作り続けています。「紫蘇の原産地はチベットで、シルクロードを経て北海道から入り、日本に伝わったと聞いています。大原産の赤紫蘇は最も原品種に近く、そのためか大原産の赤紫蘇は特に色鮮やかで、香りもいい。大原には昔、平清盛の娘、建礼門院徳子が隠遁していたなど、天皇家に縁のある人の存在があったことも知られていますから、都に届けられた紫蘇の原種となる種が、ここで代々、大切に受け継がれてきた。だからこそ、原種に近い形で今も残っているのではと考えています」。
辻さんに赤紫蘇について聞くと、それはもう丁寧に、熱く熱くさまざまなことを教えてれます。「赤紫蘇は、我々の生命線ですからね。語らせるとうるさいですよ(笑)」。
漬物が並ぶ店内のすぐ横が、しば漬けなどを仕込む工房となっている。最盛期は職人さん10人ほどで全行程を工房で行う一貫生産体制。
同店の代表商品となるのは、やはり「しば漬」。そのほか、「刻みすぐき」「割大根漬」「みょうがの甘酢漬」などの定番を置くほか、季節ごとの漬物も。そして漬物に続き人気なのが、「枝付き赤紫蘇」だとか。大原の朝市が始まった頃、赤紫蘇を枝付きで出してみたところ好評だったため、商品として全国に向け売り出してみたところ、瞬く間に人気商品に。「畑とお店が近いので、早朝に収穫した赤紫蘇をきれいに洗い、すばやく箱詰めしてお届けすることができるのです。鮮度が高いままお届けできるのが魅力で、お客様からは、“こんなにキレイな色の梅干しは初めてできました”というお声もいただいています」。
赤紫蘇は、収穫できる夏だけの期間限定商品。梅干しを漬けるのに活用されるほか、紫蘇ジュースにすると香りが違うと辻さんは話します。「しば漬けといえば、大原と言ってもらえるよう、これからも商品を通して赤紫蘇としば漬けの魅力を伝えていけたらと思います」。
イチオシ商品
生しば漬
380円(税込)
辻しば漬本舗を代表する商品「生しば漬」。原材料は、赤紫蘇と茄子、塩と実にシンプル。「鮮やかな色味は、やはり大原産の赤紫蘇だからこそ」と辻さん。自宅で漬物を漬けていた時代は、この状態のしば漬けを細かく刻み、生姜や鰹節を加えるなど、味付けをして各家庭の味にしていました。「生」の状態から、好みの味に仕上げて楽しんでみてはいかが。
ライター江角の