さまざまなウェブメディアや
『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆する他、
ご自身のBLOG『京都くらしの編集室』で京都ライフを発信している
京都在住フリーライター・江角悠子さん。
彼女ならではの視点で
京都のおつけもん屋さんを訪ね歩きます。
お店の個性やオススメの逸品、
ありきたりじゃない京のおつけもんが揃っています。
ツウな情報をお楽しみください!
京都ライター江角悠子の
京都おつけもん探訪記
Kyoto Otsukemon Exploration
Part.5
田中長奈良漬店
Tanakacho Naradsuke-ten
京都のビジネス街の中心地、四条烏丸。この地に、江戸時代後期からお店を構えているのが、奈良漬専門店「田中長奈良漬店」です。「京都で奈良漬専門店とは珍しいなあ」と思いつつ取材に伺ったところ、奈良漬の「奈良」は、奈良県に由来するのではなく、奈良時代に起源があるのだと教えてもらいました。…なるほど!。
江戸期に建てられた町家の店舗を、元の雰囲気を残しつつ、2017年にリニューアル。
初代・田中長兵衞は、元々みりんの製造を手がけており、当時酒粕だけで作られていた奈良漬に、生業としていたみりん製造の技術を取り入れ、みりん粕を使って作る奈良漬を考案。それまで辛口の保存食として食べられていた奈良漬でしたが、新たに、みりんのまろやかさを加えた「都錦味淋漬(みやこにしきみりんづけ)」という商品を誕生させたのでした。
奈良漬は、塩漬けにした野菜を何度も何度も新しい酒粕に漬け替えることで完成します。そのため同店の奈良漬は、野菜の収穫から店頭に並ぶまで、長いもので何と2年もの歳月がかかっているそう…! 野菜に酒粕のうま味をしっかりとしみ込ませるため、漬け替えを繰り返し、結果それだけの時間がかかるというのです。2年物の漬物…す、すごい。
実際に奈良漬をいただいてみると、シャキシャキと食感もよく、しっかりとしたお酒の風味の中に、まろやかな甘さがあり、そして最後、鼻に抜ける香りまでおいしい! 酒粕のうま味がしっかりしみ込んでいるからこその味わいを実感したのでした。
贈答用にもぴったりな樽詰めの商品も。昔は竹の皮に包んで販売されていたのを、今のパッケージでも表現。
店頭に並ぶのはどれも奈良漬ですが、うりを始め、きゅうり、なす、すいか、だいこん、しょうがなど、実に多彩。奈良漬だけでもこんなに種類があったのかと驚きました。また、田中長のお店のある綾小路通は、呉服店が建ち並ぶ室町通のすぐ近く。「呉服屋さんなどがよく贈答用に購入していただいています」と田中さん。確かに、これほど時間をかけ、手をかけ作り込んだ良いものは、大切な人に贈りたくなるというもの。
また古くから愛されてきた奈良漬の、新しい楽しみ方も提案しており、「薄くスライスして、クリームチーズといっしょに食べるとおいしいですよ」というのを教えてもらい、聞くほどにおいしそうだったので家に帰って即実行。まったりとしたコクのあるクリームチーズに奈良漬の風味、シャキシャキ感が最高に合う!!!ワインのおつまみにもぴったりでした。レシピはカットするだけと簡単(笑)。ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか!
イチオシ商品
都錦味淋漬
うり1袋(180g入り)972円
古くは京都・桂で栽培されていた「桂うり」の品種を受け継ぐ、徳島産のウリを漬け込んだ奈良漬。ちりめん状の肌、緻密な肉質、歯切れの良さが特徴。長い年月漬け込んでいるにも関わらず、シャキシャキとした食感が楽しめるのは、野菜の細胞が壊されていない証。しっかりうま味が染み込んでいるので、酒粕はキレイに洗い流して召し上がれ。
京都ライターの