さまざまなウェブメディアや
『anan』『婦人画報』などの人気雑誌で執筆する他、
ご自身のBLOG『京都くらしの編集室』で京都ライフを発信している
京都在住フリーライター・江角悠子さん。
彼女ならではの視点で
京都のおつけもん屋さんを訪ね歩きます。
お店の個性やオススメの逸品、
ありきたりじゃない京のおつけもんが揃っています。
ツウな情報をお楽しみください!
京都ライター江角悠子の
京都おつけもん探訪記
Kyoto Otsukemon Exploration
Part.27
京つけもの 赤尾屋本店
Kyotsukemono Akaoya Honten
1,000体もの千手観音像が並んでいることでも有名な「三十三間堂」。その西側に本店を構えているのが、「京つけもの 赤尾屋」です。創業は、なんと江戸時代前期の元禄12(1699)年。2019年には創業320周年を迎えたという老舗中の老舗。過去には、あの教科書で習った「鳥羽伏見の戦い」に食料として梅干を官軍に納品したというのだから、本当に京都の老舗が持つ歴史には圧倒されます!
店舗の裏側に工房があり、仕込みもすべてここで行われている。
現在の代表は、15代目となる土田智史さん。「私は次男坊で兄がいたのですが、あるとき兄が家を飛び出してしまって…。父親から私に店を継いでほしいと言われたことはなかったのですが、自分でやりたい!と思い継ぐことにしたんです」と、15代目の始まりは何とも波乱万丈です。大学を出た後は、愛知県岡崎の食品製造会社に勤務。食品の中でも主に漬物作りに関わっていたところ、「うちの店だったら、こんなんできるかな」と次第に実家の漬物のことばかり考えるようになっていたとか。2年ほど勤め京都に戻ってきてからは先代と一緒に漬け込み作業をする日々。「漬物作りは、ほとんどが感覚的なことばかり。父の言う塩ひと振りがどのくらいの量なのか、実際に振ってもらって塩の量を確かめたり、漬け上がった味を覚えるなどして、ひたすら数をこなし父の味を再現できるようにしました」。
赤尾屋の漬物の特徴は「塩角が立っていないこと」だと土田さんは言います。「最初の下漬けではけっこうキツめに塩漬けをして野菜の水分を出しきってから、昆布の旨みなど味がのるように仕上げています。漬け替えは最低2回。浅漬けでも1週間〜10日ほどかけて時間をかけて味を定着させているので、塩角がたつことなく旨みが浸透しているのだと思います。時間も手間もかかりますが、そうすることで出来上がってから味の変化が少なく、お客様にも喜ばれています」。
季節ごとに商品は入れ替わり常時30種ほど。「うちの店に看板商品ってないんです。お客様にそれぞれの看板商品を決めてもらえたら」と土田さん。
漬物に使う野菜は、朝の5時半くらいから京都市中央市場まで仕入れに。「実は10年くらい前に兄が戻ってきてくれて。今は市場への仕入れや漬け込み作業に関しては、ほぼ兄に任せています」とのこと。お兄さん、戻ってこられたのですね! 市場へ出向いても、「野菜がおいしくなかったらどうにもならないんで、いい野菜がなかったら、いさぎよく諦めるのがうちのやり方」と土田さん。京都の冬の味・千枚漬も11月末〜2月頭までと、店頭に並ぶ期間は短いのですが、それも「野菜ありきで考えているから」。300年続いてきた店を兄弟で受け継ぎ、また次の世代へと繋ぐ。「店をこれ以上大きくしようとは思っていません。ただ、自分たちの納得のいく漬物を作り続けていくだけです」。
イチオシ商品
繭味(まゆみ)大根
600円(税抜き)
14代目が考案したオリジナル。繭のように真っ白な白味噌に包まれていることから、このネーミングに。厳選した大根を利尻昆布で丹念に漬け込んだのち、京都の白粒味噌と糀で通常の漬物の倍、ひと月以上の時間と手間をかけて作られています。味噌は洗い流さず、好みの大きさに切って味噌と一緒に味わってみてください。
ライター江角の
京つけもの 赤尾屋本店
京都市東山区本町七丁目21番地
TEL :075-561-3032
営業時間:9:00~18:00
休み:木曜定休(11月、12月は無休。ただし12月30日、31日は休み)
https://www.akaoya.jp/